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2024.06.05

『T・P本 〜アニメ「T・Pぼん」と
藤子・F・不二雄の世界』刊行記念!

Netflixシリーズ
「T・Pぼん」
安藤真裕監督インタビュー
【前編】


藤子・F・不二雄生誕90周年記念作品として、Netflixにて独占配信中のシリーズアニメ「T・P(タイムパトロール)ぼん」。
エピソードごとに異なる時代と場所を冒険する時間SF大作をまとめあげたのは、スペクタクルな演出に定評のある安藤真裕監督。
安藤監督にうかがった制作秘話や見どころを前編と後編に分けてお届けします。

■Netflixシリーズ「T・Pぼん」
シーズン1:独占配信中
シーズン2:7月17日(水)より独占配信


−「T・Pぼん」のアニメシリーズの監督に抜擢されたときのお気持ちは?
自分のこれまでのキャリアからF先生のアニメは縁遠い世界だと思っていたので、今回のオファーは意外で自分で大丈夫かな?と不安もよぎりました。ただ、記憶をたどると最初のクリエイティブな世界との出会いは藤子作品だったんです。小学校低学年のときに自分のお金で初めて買った漫画の単行本は、てんとう虫コミックスの『ドラえもん』6巻でした(笑)。幼少期に様々な藤子作品に育てられた世代として、大人になって先生の映像作品制作に参加できることは良い恩返しの機会だと思いました。
「T・Pぼん」の原作漫画との出会いは中学1年生くらい。当時よく読んでいた掲載誌に不定期で載っていました。藤子先生の新作をたまに読めるお得感がうれしかったです。僕が知っている「ドラえもん」や「パーマン」とは違うテイストの知的な作品という印象で、タイムボートなどのデザインがすごく魅力的だったのを覚えています。

−アニメ化にあたって、心がけたことや、苦労したことは?
時間SFの名作を現代の意匠で映像作品としてよみがえらせ、次の世代につなげられるアニメにしたいという気持ちで取り組みました。
苦労したところは、やはり歴史考証ですね。各話ごと大学の教授など最適な専門家をプロデューサーに探してもらい、みなさん快く引き受けてくださいました。中には「T・Pぼん」が歴史学の道に入るきっかけになったという方もいて、原作自体の歴史の長さと藤子・F・不二雄先生の影響力を改めて知りました。そして、いずれの考証の先生も原作漫画におけるF先生の博識ぶりと知識の正確さに一様に驚嘆されていました。「ほぼ問題ないけど、あえていうならここくらい」という感じ。あとは連載から40年経って変わった歴史的な事実などを教えていただき、上書き方法を提案していただきました。基本は原作に寄り沿う形で、新しいアイディアを史実に照らし合わせながら取り入れました。

−主人公「ぼん」の設定でこだわったところは?
やはり作品内で一番出番の多いぼんの部屋ですね。ぼんの部屋はどこかの時代へ行くときの起点になる非日常への入口なのでこだわりました。小学生の気持ちを残したまま中学生になったイメージで、恐竜やロケットの模型に昆虫の飼育ケース、天体望遠鏡、地球儀、世界地図などいろいろなものをマニアックにならない程度に置きました。ぼんはふつうの少年だけどタイムパトロールとしての適応能力が高いので、たぶん好奇心旺盛な性格だろうと。フラットな立ち位置で、さまざまなことに興味がある平凡な少年がF先生の求めている主人公像かなと思いました。フタバスズキリュウの模型を置いたのは、第1話の後半で本物が出てくる軽い前フリと、やはり藤子・F・不二雄作品でいえば「のび太の恐竜」のピー助は外せないですからね(笑)

ぼんの部屋の美術設定。時間移動用マシンの「タイムボート」は、この天井から現れる。


−シーズン1で特に観てもらいたいお気に入りのエピソードは?
第1話「消されてたまるか」
主人公が日常から非日常に行く部分は第1話でしか描けないので、物語の導入部として慎重に作りました。ぼんが未知なる新しい扉を開く戸惑いやときめき、身近な日常が唐突に非日常に変容する怖さなど、ぼん目線で感情移入してもらえるように意識して描きました。

第1話「消されてたまるか」のラストではアニメオリジナルの恐怖展開に。

第8話「戦場の美少女」
ぼんがタイムパトロールの任務ではじめて葛藤し、意義を見出し成長する重要エピソードです。我々にとって比較的近い過去なので身近な感じもあります。タイムパトロールの装置を使って恋人たちが時を超えてつながるエモーショナルなシーンは、シリーズ随一の名場面。情緒的になりすぎるとF先生らしさから離れてしまうので、そのさじ加減に気をつかいました。

第8話「戦場の美少女」の救助対象である桜木少尉。太平洋戦争末期の沖縄戦で特攻する予定だったが……!?

さらに、シーズン1をしめくくる第12話の舞台はそれまでの過去世界ではなく荒廃した超未来。頼りになるタイムパトロールの装備も使えない世界で、ぼんとリームとブヨヨン、それぞれの絆とチームとしての成長に注目してください。そしてシーズン2につながる要素もふくめて楽しんでもらえるとうれしいです。

第12話「超空間の漂流者」では、ぼんとリームは荒廃した未来の世界から戻れなくなってしまう!?


[安藤真裕監督プロフィール] 
あんどう・まさひろ
1967年生まれ、北海道出身。アニメーター。高校卒業後、アニメ制作会社あんなぷるに入社し、数多くの原画を手がける。その後フリーに転身し、『劇場版クレヨンしんちゃん』シリーズや『カウボーイビパップ 天国の扉』などに参加。2007年に劇場アニメ『ストレンヂア 無皇刃譚』で監督デビュー。以降、テレビアニメの監督もたびたび務める。


2024年7月17日(水)発売決定!
ドラえもん&藤子・F・不二雄公式ファンブック
Fライフ増刊 T・P本(ぼん)

〜アニメ「T・Pぼん」と藤子・F・不二雄の世界

定価:2,420円(税込) 
発行:小学館
電子配信版:発売同日配信
※デザインは変わる場合があります。
本書にも安藤真裕監督インタビューのロングバージョンほか、シリーズ構成担当・柿原優子さん、メインライター・佐藤大さんインタビューもたっぷり掲載!発売をお楽しみに!







「T・Pぼん(タイムパトロールぼん)」
【ストーリー】
なにもかもが平凡な中学生の並平凡は、未来からやってきたT・P(タイムパトロール)隊員の少女リーム・ストリーム、不思議な生き物ブヨヨンと出会う。
歴史に影響しない、不幸な死を迎えてしまった人間を救う活動をしているというT・P隊員。任務を遂行する中でリームたちを見た人間の記憶は消されることになっているが、とあることから記憶が消されなかった凡は、やむをえずタイムパトロールの見習い隊員として迎えられる。
リームとバディを組んで任務を遂行していくことになった凡は、時代も場所もひとっ飛びできるタイムボートをはじめとする未来の道具に大興奮。お調子者の凡だが任務を通じ、それぞれの時代で賢明に生きる人たちの人生に触れていくことになる。 「T・Pぼん」と一緒に、地球と人類の壮大な歴史を旅しよう!!

◎Netflixシリーズ「T・Pぼん(タイムパトロールぼん)
【キャスト】
並平凡(なみひら ぼん):若山晃久/リーム・ストリーム:種﨑敦美/ブヨヨン:宮野真守/安川ユミ子:黒沢ともよ 白石鉄男:日笠陽子/柳沢:伊藤節生/白木陽子:白砂沙帆/ゲイラ:加瀬康之

【スタッフ】
原作:藤子・F・不二雄
監督:安藤真裕 シリーズ構成:柿原優子 メインライター:佐藤大 キャラクターデザイン・総作画監督:佐藤雅弘 メカニカルデザイン:玉盛順一朗 美術デザイン:綱頭瑛子 美術監督:大西達朗 色彩設計:中山しほ子 撮影監督:張盈頴 3DCG監督:三宅拓馬 編集:髙橋歩 音響監督:若林和弘 音響効果:倉橋静男、西佐知子(サウンドボックス) 音楽:大島ミチル
企画協力:藤子プロ アニメーション制作:ボンズ 製作:Netflix
※張盈頴の頴の左下は示すではなく禾
©Fujiko-Pro ©2024 Netflix

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